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2017-06

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謡曲「関寺小町」~百年は花に宿りし胡蝶の舞

関寺小町をよんでみたくなりました
見に行ったのは一度だけー

▼「関寺小町」あらすじ

初秋、七月七日七夕の日。
近江の国関寺の住僧は和歌を稽古している稚児たちをつれて
和歌を極めたと評判の山の麓の庵に住む老女の元を訪ねる。
住僧は老女に稚児たちに和歌を教えるように頼む。
老女は古今集の仮名序の言葉をいろいろ教える。
衣通姫から小野小町の歌について応答していくうちに、
老女が小町の歌について語るとき「われ」といったことに住僧は気づく。
そして老女が小町ではないかと尋ねる。小町は昔を偲びながら老いた我身を悲しむ。
住僧は七夕の祭に老女を誘う。稚児の舞を見て老女もまた舞を舞って昔を偲ぶ。
そして夜が明けるといってまたもとの藁屋に帰る。


▼内容
三番目物。太鼓なし。世阿弥作。


ここのテキストをみてみることに

http://www.kanazawa-bidai.ac.jp/cgi-bin/inputlog.pl

読みやすさのため適当に改行とか文字装飾とかいれてます
まずは全文収録して、あとでぼちぼち読んでいこうかなと・・・

<関寺小町>
<ワキ>関寺の住僧
<ワキツレ>従僧
<シテ>老後の小野小町
<子方>稚児
<名著>

ワキ、ワキツレ二人次第「待ち得て今ぞ秋に逢ふ。/\星の祭を急がん。
ワキ詞「これは江州関寺の住僧にて候。
今日は七月七日にて候ふ程に。
七夕の祭を取り行ひ候。
又この山陰に老女の庵を結びて候ふが。
歌道を極めたる由申し候ふ程に。
幼き人を伴ひ申し。かの老女の物語をも承らばやと存じ候。
ワキ、ツレサシ「颯々たる涼風と衰鬢と。
一時にきたる初秋の。七日の夕に早なりぬ。
ワキ「今日七夕の手向とて。糸竹呂律の色々に。
ツレ「ことを尽して。
ワキ「敷島の。
ワキ、ワキツレ二人歌「道を願の糸はへて。/\。織るや錦のはた薄。
花をも添へて秋草の露の玉琴かき鳴らす。
松風までも折からの。手向に叶ふ。夕かな手向に叶ふ夕かな。

シテサシ「朝に一鉢を得ざれども求むるに能はず。
草衣夕の肌を隠さゞれども。おぎぬふに便あり。
花は雨の過ぐるによつて紅まさにおびたり。
柳は風に欺かれて緑漸く垂れり。
人更に若き事なし。
終には老の鶯の。百囀の春は来れども。
昔に帰る秋はなし。
あら来し方恋しや/\。


ワキ詞「いかに老女に申すべき事の候。これは関寺に住む者にて候。
此寺の児達歌を御稽古にて候ふが。老女の御事を聞き給ひ。
歌をよむべき様をも問ひ申し。又御物語をも承らん為に。
児達もこれまで御いでにて候。

シテ「これは思も寄らぬ事を承り候ふものかな。
埋木の人知れぬ事となり。花薄穂に出すべきにしもあらず。
心を種として言葉の花色香に染まば。などか其風を得ざらん。
優しくも幼き人の御心に好き給ふものかな。

ワキ「先々普く人の翫び候ふは。
難波津の歌を以て。手習ふ人の始にもすべきよし聞え候ふよなう。

シテ「それ歌は神代より。始まれども。
文字の数定まらずして。事の心分き難かりけらし。
今人の代となりて。めでたかりし世継をよみ治めし詠歌なればとて。
難波津の歌を翫び候。

ワキ「又浅香山の歌は。王の御心を和らげし故に。これまためでたき詠歌よなう。

シテ「実によく心得給ひたり。此二歌を父母として。
ワキ「手習ふ人の始となりて。
シテ詞「高き賎しき人をも分かず。
ワキ「都鄙遠国の鄙人や。
シテ「我等如きの庶人までも。
ワキ「好ける心に。
シテ「近江の海の。
地「さゝ波や。
浜の真砂は尽くるとも。/\。よむ言の葉はよも尽きじ。
青柳の糸絶えず。松の葉の散失せぬ。種は心と思召せ。
仮令時移り事去るとも。此歌の文字あらば。
鳥の跡も尽きせじや鳥の跡も尽きせじ。

ワキ詞「有難う候。古き歌人の言葉多しといへども。
女の歌は稀なるに。老女の御事例少なうこそ候へ。
我が背子が来べき宵なりさゝがにの。蜘蛛の振舞かねてしるしも。
これも女の歌候ふか。

シテ「これは古衣通姫の御歌なり。
衣通姫とは允恭天皇の后にてまします。形の如く我等もその流をこそ学び候へ。
ワキ「さては衣通姫の流を学び給ふかや。
近年聞えたる小野の小町こそ。衣通姫の流とは承れ。
わびぬれば身を浮草の根を絶えて。誘ふ水あらばいなんとぞ思ふ。
シテ「これは小町の歌候ふな。

シテ「これは大江の惟章が心がはりせし程に。世の中物うかりしに。
詞「文屋の康秀が三河の守になりて下りし時。田舎にて心をも慰めよかしと。
我を誘ひし程によみし歌なり。
忘れて年を経しものを。
聞けば涙のふる事の又思はるゝ悲しさよ。


ワキ「不思議やなわびぬればの歌は。我よみたりしと承る。
又衣通姫の流と聞えつるも小町なり。実に年月を考ふるに。
老女は百に及ぶといへば。
たとひ小町の存ふるとも。いまだこの世に在るべきなれば。
今は疑ふ所もなく。御身は小町の果ぞとよ。さのみな包み給ひそとよ。

シテ「いや小町とは恥かしや。
色見えでとこそよみしものを。
地歌「移ろふものは世の中の。人の心の花や見ゆる。
恥かしやわびぬれば。身を浮草の根を絶えて。
誘ふ水あらば今も。いなんとぞ思ふ恥かしや。
地クリ「実にや包めども。袖に溜らぬ白玉は。
人を見ぬ目の涙の雨。
古事のみを思草の。花しをれたる身の果まで。
なに白露の名残ならん。

シテサシ「思ひつゝ寐ればや人の見えつらん。
地「よみしも今は身の上に。存へ来ぬる年月を。
送り迎へて春秋の。露行き霜来つて草葉変じ虫の音も枯れたり。
シテ「生命既に限となつて。
地「唯。槿花一日の。栄に同じ。
クセ「あるは無く。無きは数添ふ世の中に。
あはれいづれの。日まで歎かんと。
詠ぜし事も我ながら。いつまで草の花散じ。
葉落ちても残りけるは露の命なりけるぞ。
恋しの昔や。忍ばしの古の身やと。
思ひし時だにも。また古事になり行く身の。
せめて今は又。初の老ぞ恋しき。

あはれ実に古は。一夜泊りし宿までも。
玳瑁を飾り。垣に金花を懸け。戸には水精を連ねつゝ。
鸞輿属車の玉衣の色を飾りて敷妙の。枕づく。
妻屋の内にしては。花の錦の褥の起き臥しなりし身なれども。
今は埴生のこや玉を敷きし床ならん。

シテ「関寺の鐘の声。
地「諸行無常と聞くなれども老耳には益もなし。

逢坂の山風の。是生滅法の理をも得ばこそ。
飛花落葉のをり/\は。
好ける道とて草の戸に。硯を馴らしつゝ筆を染めて藻塩草。
書くや言の葉の枯々に哀なる様にて強からず。
強からぬは女の歌なれば。
いとゞしく老の身の。弱り行く果ぞ悲しき。


子方詞「いかに申し候。七夕の祭遅なはり候。老女をもともなひ御申し候へ。
ワキ「いかに老女。七夕の祭を御いであつて御覧候へ。
シテ「いや/\老女の事は憚にて候ふほどに。思も寄らず候。
ワキ「何の苦しう候ふべき。唯々御出で候へとよ。
地歌「七夕の。織る糸竹の手向草。幾年経てかかげろふの。
小野の小町の。百年に及ぶや天つ星合の。
雲の上人に馴れ馴れし。
袖も今は麻衣の。浅ましや痛はしや目もあてられぬ有様。
とても今宵は七夕の。/\。手向の数も色々の。
或は糸竹に懸けて廻す盃の。雪を受けたる。
童舞の袖ぞ面白き。
星祭るなり呉竹の。
シテ「代々を経て住む。行末の。
地「幾久しさぞ。万歳楽。

子方舞「。
シテ詞「あら面白の唯今の舞の袖やな。
むかし豊の明の五節の舞姫の袖をこそ五度返しゝが。
これは又七夕の手向の袖ならば。
七返にてやあるべき。

詞「狂人走れば不狂人も走るとかや。
今の童舞の袖に引かれて。狂人こそ走り候へ。
百年は。

序ノ舞「。
シテワカ「百年は。花に宿りし。胡蝶の舞。
地「哀なり/\。老木の花の枝。

シテ「さす袖も手忘れ。
地「裳も足弱く。
シテ「たゞよふ波の。
地「立舞ふ袂は翻せども。
昔に返す袖はあらばこそ。
シテ「あら恋しの古やな。


地「さる程に初秋の短夜。はや明方の関寺の鐘。
シテ「鳥もしきりに。
地「告げ渡る東雲の。あさまにもならば。
シテ「羽束師の森の。
地「はづかしの森の木がくれもよもあらじ。
暇申して帰るとて杖にすがりてよろ/\と。
本の藁屋に帰りけり。
百年の姥と聞えしは
小町が果の名なりけり小町が果の名なりけり。



ここからぼちぼち読んでみることに
本とかの注釈とかも見てみたりするけれど
基本的には個人的趣味で取捨選択するので
興味がないところはとばし読みー

文字装飾(大)──の箇所は
個人的趣味の箇所
他の作品でもよくみられる主題、言葉なのでチェック
それと、作品の「老」の主題についてのところとか




老女物──はかなり能に独特なものかと

似たようなものの抄出メモ

▼姨捨

昔恋しき夜遊の袖
(序の舞)

返せや返せ
昔の秋を

▼檜垣

檜垣の女の身の果を
(序の舞)
(ワカ)水むすぶ、つるべのなわの、つるべのなわの
くり返し
昔に帰れ、白河の波、白河の波、白河の、
水のあはれを知るゆえに



三老女──関寺小町、姨捨、檜垣

宝生流では檜垣は演じないとか?

檜垣は、乱拍子入りの(普段はない)をえっと、梅若六郎のでみたかなー
よかった

姨捨ってみたことあるかどうか記憶にない




▼引用されたもの

たくさんの和歌、古今集序とかがちりばめられています
研究するわけではないからいちいち書くきもないので思いついたところだけ
(いちいち調べる楽しみもあるけど、今は違う)

▼小野小町の和歌

わびぬれば身をうき草の根を絶えて誘ふ水あらばいなむとぞ思ふ

花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に

色見えで移ろふものは世の中の人の心の花にぞありける

うたた寝に恋しき人を見てしより夢てふものは頼み初めてき

今はとてわが身時雨にふりぬれば言の葉さへに移ろひにけり

思ひつつ寝ればや人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを

あるはなくなきは数添ふ世の中にあはれいづれの日まで嘆かむ




▼作品に登場する和歌・文学

わが夫子が来べき夕なりささがねの蜘蛛の行ひ是夕著しも 衣通郎姫

難波津に咲くやこの花 冬ごもり今は春べと咲くやこの花(古今和歌集・仮名序・王仁)

狂人のまねとて大路を走らば則ち狂人なり(『徒然草』八十五)

百年は花に宿りて過してきこの世は蝶の夢にぞありける(堀川百首・大江匡房)

胡蝶の夢──荘子

「荘周が夢を見て蝶になり、蝶として大いに楽しんだ所、夢が覚める。果たして荘周が夢を見て蝶になったのか、あるいは蝶が夢を見て荘周になっているのか。」



序の舞のところあたりで使われた和歌

百年は花に宿りて過してき
 この世は蝶の夢にぞありける
        (堀川百首・大江匡房)

▼大江匡房(おおえのまさふさ)

http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/masahusa.html





小町は歌道について語ります
古今集の仮名序がよく引用されています

▼古今集序
やまとうたは、人のこころをたねとして、よろづのことのはとぞなれりける、
世中にある人、ことわざしげきものなれば、心におもふことを見るものきくものにつけていひいだせるなり
、花になくうぐひす、水にすむかはづのこゑをきけば、いきとしいけるものいづれかうたをよまざりける、
ちからをもいれずしてあめつちをうごかし、
めに見えぬおに神をもあはれとおもはせ、
をとこをむなのなかをもやはらげ、たけきもののふの心をもなぐさむるは、うたなり


このうた、あめつちのひらけはじまりける時よりいできにけり、あまのうきはしのしたにて、め神を神となりたまへる事をいへるうたなり、
しかあれども、世につたはることは、ひさかたのあめにしては、したてるひめにはじまり、したてるひめとは、あめわかみこのめなり、せうとの神のかたち、をか、たににうつりてかかやくをよめるえびす哥なるべし、
これらはもじのかずもさだまらず、うたのやうにもあらぬことども也、
あらかねのつちにしては、すさのをのみことよりぞおこりける、
ちはやぶる神世にはうたのもじもさだまらず、
すなほにして、事の心わきがたかりけらし、
ひとの世となりて、すさのをのみことよりぞ
みそもじあまりひともじはよみける、すさのをのみことは、あまてるおほむ神のこのかみ也、女とすみたまはむとて、いづものくにに宮づくりしたまふ時に、その所にやいろのくものたつを見てよみたまへる也、
<やくもたついづもやへがきつまごめにやへがきつくるそのやへがきを>、
かくてぞ花をめで、とりをうらやみ、かすみをあはれび、つゆをかなしぶ心ことば、
おほくさまざまになりにける、とほき所もいでたつあしもとよりはじまりて、
年月をわたり、たかき山もふもとのちりひぢよりなりて、
あまぐもたなびくまでおひのぼれるごとくに、このうたもかくのごとくなるべし、
なにはづのうたは、みかどのおほむはじめなり、
おほさざきのみかどの、なにはづにてみこときこえける時、東宮をたがひにゆづりて、くらゐにつきたまはで、三とせになりにければ、王仁といふ人のいぶかり思ひて、よみてたてまつりけるうた也、
この花は梅のはなをいふなるべし、
あさか山のことばは、うねめのたはぶれよりよみて、かづらきのおほきみをみちのおくへつかはしたりけるに、くにのつかさ、事おろそかなりとて、
まうけなどしたりけれど、すさまじかりければ、うねめなりける女の、かはらけとりてよめるなり、
これにぞおほきみの心とけにける、
<あさか山かげさへ見ゆる山の井のあさくは人をおもふのもかは>、
このふたうたはうたのちちははのやうにてぞ、手ならふ人のはじめにもしける、
そもそもうたのさまむつなり、からのうたにもかくぞあるべき、そのむくさのひとつには、そへうた、おほさざきのみかどをそへたてまつれるうた、
<なにはづにさくやこの花ふゆごもりいまははるべとさくやこのはな>
といへるなるべし、ふたつには、かぞへうた、
<さく花におもひつくみのあぢきなさ身にいたづきのいるもしらずて>
いへるなるべし、
これはただ事にいひて、ものにたとへなどもせぬものなり、このうたいかにいへるにかあらむ、その心えがたし、いつつにただことうたといへるなむこれにはかなふべき、みつにはなずらへうた、
<きみにけさあしたのしものおきていなばこひしきごとにきえやわたらむ>
いへるなるべし
これはものにもなずらへて、それがやうになむあるとやうにいふ也、この哥よくかなへりとも見えず、
<たらちめのおやのかふこのまゆごもりいぶせくもあるかいもにあはずて>、
かやうなるやこれにはかなふべからむ、よつにはたとへうた、
<わがこひはよむともつきじありそうみのはまのまさごはよみつくすとも>
といへるなるべし、これはよろづのくさ木とりけだものにつけて心を見するなり、
このうたはかくれたる所なむなき、されどはじめのそへうたとおなじやうなれば、すこしさまをかへたるなるべし、
<すまのあまのしほやくけぶり風をいたみおもはぬ方にたなびきにけり>、
この哥などやかなふべからむ、
いつつにはただことうた、
<いつはりのなき世なりせばいかばかり人のことのはうれしからまし>
といへるなるべし、これはことのととのほりただしきをいふ也、この哥の心さらにかなはず、とめうたとやいふべからむ、
<山ざくらあくまでいろを見つるかな花ちるべくも風ふかぬよに>、
むつにはいはひうた、
<このとのはむべもとみけりさき草のみつばよつばにとのづくりせり>
といへるなるべし、
これは世をほめて神につぐる也、このうたいはひうたとは見えずなむある、
<かすがのにわかなつみつつよろづ世をいはふ心は神ぞしるらむ>、
これらやすこしかなふべからむ、おほよそむくさにわかれむ事はえあるまじき事になむ、今の世中いろにつき人の心花になりにけるより、あだなるうた、はかなきことのみいでくれば、いろごのみのいへに、むもれ木の人しれぬこととなりて、まめなるところには花すすきほにいだすべきことにもあらずなりにたり、
そのはじめをおもへばかかるべくなむあらぬ、いにしへの世世のみかど、春の花のあした、秋の月の夜ごとに、さぶらふ人人をめして、ことにつけつつうたをたてまつらしめたまふ、あるは花をそふとてたよりなき所にまどひ、あるは月をおもふとてしるべなきやみにたどれる心心を見給ひて、さかしおろかなりとしろしめしけむ、しかあるのみにあらず、さざれいしにたとへ、つくば山にかけてきみをねがひ、よろこび身にすぎ、たのしび心にあまり、ふじのけぶりによそへて人をこひ、松虫のねにともをしのび、たかさごすみの江のまつもあひおひのやうにおぼえ、おとこ山のむかしをおもひいでてをみなへしのひとときをくねるにも、うたをいひてぞなぐさめける、
又春のあしたに花のちるを見、秋のゆふぐれにこのはのおつるをきき、あるはとしごとにかがみのかげに見ゆる雪と浪とをなげき、草のつゆ水あわを見てわが身をおどろき、あるはきのふはさかえおごりて時をうしなひ世にわび、したしかりしもうとくなり、あるは松山の浪をかけ、野なかの水をくみ、秋はぎのしたばをながめ、あかつきのしぎのはねがきをかぞへ、あるはくれ竹のうきふしを人にいひよしの河をひきて世中をうらみきつるに、今はふじの山も煙たたずなり、ながらのはしもつくるなりときく人はうたにのみぞ心をなぐさめける、
いにしへよりかくつたはるうちにも、ならの御時よりぞひろまりにける、かのおほむ世やうたの心をしろしめしたりけむ、かのおほむ時に、おほきみつのくらゐかきのもとの人まろなむうたのひじりなりける、これはきみもひとも身をあはせたりといふなるべし、秋のゆふべ竜田河にながるるもみぢをば、みかどのおほむめににしきと見たまひ、春のあしたよしのの山のさくらは人まろが心にはくもかとのみなむおぼえける、又山の辺のあかひとといふ人ありけり、うたにあやしくたへなりけり、人まろはあかひとがかみにたたむことかたく、あか人は人まろがしもにたたむことかたくなむありける、ならのみかどの御うた、
<たつた河もみぢみだれてながるめりわたらばにしきなかやたえなむ>、
人まろ
<梅花それとも見えず久方のあまぎる雪のなべてふれれば>、
<ほのぼのとあかしのうらのあさぎりに島がくれ行く舟をしぞ思ふ>、
赤人
<春ののにすみれつみにとこし我ぞのをなつかしみひと夜ねにける>、
<わかの浦にしほみちくれば方をなみあしべをさしてたづなきわたる>、
この人人をおきて又すぐれたる人もくれ竹の世世にきこえ、かたいとのよりよりにたえずぞありける、これよりさきのうたをあつめてなむ方えふしふとなづけられたりける、ここにいにしへのことをもうたの心をもしれる人わづかにひとりふたりなりき、
しかあれどこれかれえたるところ、えぬところたがひになむある、かの御時よりこのかた、年はももとせあまり、世はとつぎになむなりにける、いにしへの事をもうたをも、しれる人よむ人おほからず、いまこのことをいふに、つかさくらゐたかき人をば、たやすきやうなればいれず、そのほかにちかき世に、その名きこえたる人は、
すなはち僧正遍昭は、うたのさまはえたれどもまことすくなし、たとへばゑにかけるをうなを見ていたづらに心をうごかすがごとし、
<あさみどりいとよりかけてしらつゆをたまにもぬけるはるの柳か>、
<はちすばのにごりにしまぬ心もてなにかはつゆをたまとあざむく>、
さがのにてむまよりおちてよめる、
<名にめでてをれるばかりぞをみなへしわれおちにきと人にかたるな>、
ありはらのなりひらはその心あまりてことばたらず、しぼめる花のいろなくてにほひのこれるがごとし、
<月やあらぬ春やむかしの春ならぬわが身ひとつはもとの身にして>、
<おほかたは月をもめでじこれぞこのつもれば人のおいとなるもの>、
<ねぬるよのゆめをはかなみまどろめばいやはかなにもなりまさるかな>、
ふんやのやすひではことばはたくみにて、そのさま身におはず、いはばあき人のよききぬきたらむがごとし、
<吹からによもの草木のしをるればむべ山かぜをあらしといふらむ>、深
草のみかどの御国忌に、
<草ふかきかすみのたににかげかくしてる日のくれしけふにやはあらぬ>、
宇治山のそうきせんは、ことばかすかにしてはじめをはりたしかならず、いはば秋の月を見るにあかつきのくもにあへるがごとし、
<わがいほはみやこのたつみしかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり>、
よめるうたおほくきこえねば、かれこれをかよはしてよくしらず、
をののこまちは、いにしへのそとほりひめの流なり、
あはれなるやうにてつよからず、いはばよきをうなのなやめる所あるににたり、
つよからぬはをうなのうたなればなるべし、
<思ひつつぬればや人の見えつらむゆめとしりせばさめざらましを>、
<いろ見えでうつろふものは世中の人の心の花にぞありける>、
<わびぬれば身をうきくさのねをたえてさそふ水あらばいなむとぞ思ふ>、
そとほりひめのうた、
<わがせこがくべきよひなりささがにのくものふるまひかねてしるしも>、
おほとものくろぬしは、そのさまいやし、いはばたきぎおへる山びとの花のかげにやすめるがごとし、
<思ひいでてこひしき時ははつかりのなきてわたると人はしらずや>、
<かがみ山いざたちよりて見てゆかむとしへぬる身はおいやしぬると>、
このほかの人人その名きこゆる、野辺におふるかづらのはひひろごり、はやしにしげきこのはのごとくにおほかれど、うたとのみ思ひてそのさましらぬなるべし、
かかるにいますべらぎのあめのしたしろしめすこと、よつの時ここのかへりになむなりぬる、あまねきおほむうつくしみのなみ、やしまのほかまでながれ、ひろきおほむめぐみのかげ、つ
くば山のふもとよりもしげくおはしまして、よろづのまつりごとをきこしめすいとま、もろもろのことをすてたまはぬあまりに、いにしへのことをもわすれじ、ふりにしことをもおこしたまふとて、いまもみそなはし、のちの世にもつたはれとて、延喜五年四月十八日に大内記きのとものり、御書のところのあづかりきのつらゆき、さきのかひのさう官おほしかふちのみつね、右衛門の府生みぶのただみねらにおほせられて、万えふしふにいらぬふるきうたみづからのをもたてまつらしめたまひてなむ、それがなかにむめをかざすよりはじめて、ほととぎすをきき、もみぢををり、雪を見るにいたるまで、又つるかめにつけてきみをおもひ人をもいはひ、秋はぎ夏草を見てつまをこひ、あふさか山にいたりてたむけをいのり、あるは春夏秋冬にもいらぬくさぐさのうたをなむえらばせたまひける、すべて千うた、はたまき、名づけてこきむわかしふといふ、かくこのたびあつめえらばれて、山した水のたえず、はまのまさごのかずおほくつもりぬれば、いまはあすかがはのせになるうらみもきこえず、さざれいしのいはほとなるよろこびのみぞあるべき、それまくらことば、春の花にほひすくなくして、むなしき名のみ秋の夜のながきをかこてれば、かつは人のみみにおそり、かつはうたの心にはぢおもへど、たなびくくものたちゐなくしかのおきふしは、つらゆきらがこの世におなじくむまれて、このことの時にあへるをなむよろこびぬる、人まろなくなりにたれど、うたのこととどまれるかな、たとひ時うつりことさり、たのしびかなしびゆきかふとも、このうたのもじあるをや、あをやぎのいとたえず、まつのはのちりうせずして、まさきのかづらながくつたはり、とりのあとひさしくとどまれらば、うたのさまをもしり、ことの心をえたらむ人は、おほぞらの月を見るがごとくにいにしへをあふぎて、いまをこひざらめかも




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