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2017-05

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『ダロウェイ夫人』(ウルフ)他~小説の冒頭について&冒頭集②

小説の冒頭、書き出しについて続きの考察ー
以下の続きです

 『百年の孤独』(ガルシア=マルケス)~小説の冒頭と結末について+人物・出来事一覧+マジックリアリズムとか
 http://kuzukiria.blog114.fc2.com/blog-entry-41.html

今回は『ダロウェイ夫人』(ウルフ)他の冒頭もみてみます

ダロウェイ夫人 ダロウェイ夫人
ヴァージニア ウルフ (1998/07)
集英社

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▼小説の冒頭について

小説作品は設定が全く不明な所から始まります
霧の中、闇の中にいるような
知識や情報が欠落した
茫漠とした不安が常に読者の出発点となります

それは不思議な所です
読者にとって未知の人物、未知の場所だけれども
登場人物たちにとってはそれらの素性は既知です

読者と作品世界とは
この時点においては遠く隔たった存在です

作品が進行していくどこかの地点で
読者と作品世界の距離は縮まります
読者はどのようにして作品世界に近づいていくのか──
それはとても興味深い問題です

その近づき方を解き明かしてゆけば
作品はどのように開始してゆくべきかも
逆に分かってくるかとー

まず情報や知識が知らされない状態をどう評価するか?
この宙づりの感覚をただの問題点とだけするのか
それとも、冒頭特有の特徴として取り扱うのか
やり方はいろいろかもー

というわけでいくつかの作品の冒頭を集めてみることに




『ダロウェイ夫人』(ウルフ)

Mrs.Dalloway said she would buy the flowers herself.

p10
 ミセス・ダロウェイは、お花は私が買ってくるわ、と言った。
 ルーシーはたくさん仕事をかかえているのだから。ドアは蝶つがいからはずすことになっているし、ランペルメイヤーの店から配膳の人が来ることになっている。それに、とクラリッサ・ダロウェイは思った。なんてすてきな朝だろう。海辺で子どもたちに吹きつける朝の空気のようにすがすがしい。
 なんという晴れやかさ! 大気のなかへ飛び込んでいくこの気分! ブアトンの屋敷でフランス窓を勢いよくあけ、外気のなかへ飛び込んでいったとき、いつもこんなふうに感じたものだった。いまでもあの窓の蝶つがいの少しきしむ音が聞こえるようだ。早朝の空気はなんとすがすがしく、穏やかだったことか。もちろんここよりずっと静かだった。ひたひたと打ち寄せる波のように、その波の接吻のように、空気は冷たく、刺すようで、しかも(あのとき十八歳だったわたしには)厳粛な感じがした。そして花や、木々からほどけながらのぼってゆく煙や、飛びだっては舞い降りるミヤマガラスをながめていたのだった。するとピーター・ウォルシュが話しかけてきた。「菜園でご瞑想?」──それとも「ぼくはカリフラワーなんかより人間を眺めているほうがいい」だったかしら。



『失われた時を求めて』(プルースト)

p7



 長い時にわたって、私は早くから寝たものだ。ときには、ろうそくを消すと、すぐに目がふさがって、「これからぼくは眠るんだ」と自分にいうひまがないことがあった。それでも、三十分ほどすると、もう眠らなくてはならない時間だという考に目がさめるのであった、私はまだ手にもったつもりでいる本を置こうとし、あかりを吹きけそうとした、ちらと眠ったあいだも、さっき読んだことが頭のなかをめぐりつづけていた、しかしそのめぐりかたはすこし特殊な方向にまがってしまって、私自身が、本に出てきた教会とか、四重奏曲とか、フランソワ一世とカール五世の抗争とかになってしまったように思われるのであった。そうした気持は、目がさめて、なお数秒のあいだ残っていて、べつに私の理性と衝突するわけではなく、何かうろこのように目にかぶさって、すでにろうそく台の火が消えていることに気づかせないのであった。やがてそうした気持も、つかみどころがないものになりはじめた、あたかも輪廻のあとに、前世での思考がわからなくなるように、書物の主題は私から切りはなされ、私がその主題に熱中するもしないも、私の自由なのであった、



『城』(カフカ)
(新潮文庫)

 第1章

 Kが到着したのは、夜もおそくなってからであった。村は、深い雪のなかに横たわっていた。城山は、なにひとつ見えず、霧と夜闇(やあん)につつまれていた。大きな城のありかをしめすかすかな灯りさえなかった。Kは、長いあいだ、国道から村に通じる木の橋の上に立って、さだかならぬ虚空を見上げていた。
 やがて、止まる場所をさがしに出かけた。宿屋は、まだひらいていた。あいた部屋はひとつもなかったが、宿の亭主はこの夜ふけの客におどろき、面くらって、酒場でよければわらぶとんにでも寝かせてあげよう、と言った。Kに異存はなかった。



『伝奇集』(ボルヘス)

「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」
       Ⅰ
わたしのウクバール発見は、一枚の鏡と一冊の百科事典の結びつきのおかげである。
アドロゲーのホテルで静かな日々を送りながら、ブラウンの『壺葬論』のケベードふうの試訳──出版しようというつもりはないが──の校訂を続けるのだ。



「アル・ムターシムを求めて」

フィリップ・ゲダラが書いているが、ボンベイの弁護士ミール・バハドゥール・アリ作の小説『アル・ムターシムを求めて』は、「訳者の興味をそらすことのまれなイスラームの寓意詩と、当然のごとくジョン・H・ワトソンをしのいで、ブライトンの申し分のない下宿屋でくり広げられる生の恐怖を完璧に描く探偵小説との、【少々ぎくしゃくした組み合わせ】(ア・ラザー・アンカムフォータブル・コンビネイション)である」という。
この種の輪廻は【イッピュール】と呼ばれる。



「『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール」

        シルビナ・オカンポに
この小説家が残した「目に見える」作品は容易に、しかも簡単に列挙できる。
『キリストのまねび』をルイ=フェルディナン・セリーヌかジェィムズ・ジョイスの作品だと想定することは、その衰えた宗教的教訓に大いに活を入れることにはならないだろうか?



『砂の本』(ボルヘス)

「砂の本」

 線は無数の点から成り、平面は無数の線から成る。堆積は無数の平面から成り、超体積は無数の体積から成る……。いや、たしかに、このような「幾何学の法則(モレ・ゲオメトリコ)による」のは、わたしの物語をはじめる最上の方法ではない。これは真実だと主張するのが、いまや、あらゆる架空の物語の慣例である。しかしながら、わたしの話は、本当に本当なのである。
 わたしは現在、ひとりで、ブエノスアイレスのベルグラーノ通りの、アパートの四階に住んでいる。数ヶ月前になろうか、ある日暮れ方、戸口をたたく音が聞えた。あけると、見知らぬ人がはいってきた。背の高い男で、目鼻立ちは判然としなかった。そう見えたのは多分、わたしの近眼のせいだろう。全体の様子は、実直な貧乏人というところだった。



『百年の孤独』(ガルシア=マルケス)

p5(冒頭)

 長い歳月がすぎて銃殺隊の前に立つはめになったとき、おそらくアウレリャーノ・ブエンディーア大佐は、父親に連れられて初めて氷を見にいった、遠い昔のあの午後を思い出したにちがいない。
 そのころのマコンドは、先史時代の怪獣の卵のようにすべすべした、白く大きな石がごろごろしている瀬を澄んだ水がいきおいよく落ちていく川のほとりに、竹と泥づくりの家が二十軒ほど建っているだけの小さな村だった。ようやく開けそめた新天地だったから、まだ名前のない物がたくさんあって、そういう物がたがいの話のなかに出てくると、みんなは、いちいちそれを指さなければならなかった。また毎年三月になると、ぼろを着たジプシーの一家が村の近くにテントを張り、にぎやかに笛や太鼓を鳴らして新しい品物の到来を触れて歩いたものだった。最初のころに持ち込まれたものの一つに磁石がある。手だけが雀の足のようにほっそりした髭っ面の大男で、メルキアデスと名乗るジプシーが、彼の言葉を信ずればマケドニアの発明な錬金術師の手になるという世にも不思議なそのしろものを、実に荒っぽいやりくちで披露した。家から家へ二本の鉄の棒をひきずって歩いたのだ。すると、そこらの手鍋や平鍋、火掻き棒や焜炉がもとあった場所からころがり落ち、抜け出ようとして必死にもがく釘やねじのために材木は悲鳴をあげ、昔なくなった品物までが、それもいちばん念入りに捜したはずの隅っこから姿をあらわして、てんでに這うようにしてメルキアデスの魔法の鉄棒のあとを追った。それを見た村の者が唖然としていると、ジプシーはだみ声を張りあげて言った。「物にも命がある。問題は、その魂をどうやってゆさぶり起こすかだ」自然の知慮をはるかに越え、奇蹟や魔法すら遠く及ばない空想力の持主だったホセ・アルカディオ・ブエンディーアは、無用の長物めいたこの道具も地下から金を掘り出すためになら使えるのではないか、と考えた。「いや、そいつはとても無理だ」正直者のメルキアデスはそう忠告した。



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